日本を代表する舞台美術家・朝倉摂(1922-2014)。
その死後、アトリエの物置から大量の日本画が見つかった。
それは朝倉が若き日に情熱のすべてを注いだ作品たち。
高名な彫刻家・朝倉文夫の長女として生まれ、日本画家・伊東深水に学び、
絵画の道を歩み始める。しかし40代で日本画から舞台美術の世界へ活動
を移してからは、生涯画家時代のことを語りたがらなかった。
少し前、図書館で借りた「朝倉摂生誕100年展」の図録でその仕事を観て、
その時、その画力に触れ素晴らしいと思った朝倉摂。
番組の中で、東洋のロダンと呼ばれた彫刻家父朝倉文夫の娘と言われることを
とても嫌がっている様子でした。
伊藤深水に師事し描いた正統な日本画。マチスやピカソ、ベン・シャーン
いろいろな画家に影響を受け、その都度素晴らしい作品を描いた朝倉さんは、
黒人、ポール・ボブソンの絵を描いて日本画をやめたと言われています。
以降は舞台芸術に進み多くの仕事を残します。
生まれた時からの申し分のない環境、経済、遺伝子的才能から逃げたがり、
次々に試みても何でも描けてしまう才能。でも、それも自分の納得のいくもので
なかったように見える朝倉摂さんは、一途に自分を探していたようにも見えます。
力が抜けて描かれたような猫たちの絵が好きです。
朝倉摂ワールド。雑然とした魅力あるアトリエ。部屋は心を映します。
「自分に出来ること」「自分にしか出来ないこと」それを追い求めていたのかな。
誰でも、どうやって生きていても、みんな「自分らしく」あると思うんだけど。
朝倉摂さんも、あなたも、私も、みんな素晴らしい。そう思えたら幸せ。