mieと散歩しよう♪

今日という日は残りの人生の最初の1日

竹本先生の思い出

イメージ 1木々が黄色く色付くと竹本三郎先生のことを思い出す。先生は新制作展では冬の海のシリーズなど描かれ重厚で厳しい画風の印象が強い。けれども、植物、木々や花を描かれる時、明るい色調で生命力に溢れて活き活きと温かい。それは先生のお人柄そのものだったなぁ・・・。
学生だったある日、同郷のTさんとふたり、スケッチにお供した。どういう経緯でふたりだけ先生とご一緒出来ることになったのかは、どうしても思い出せないけれど、呉駅にお出迎えして呉港で一日、海や船を、私たちは水彩でスケッチし、先生は油絵の小品を何枚か描かれた。
先生は「孤高」と言う言葉がぴったりな厳しくて無口で級友たちは怖がっていて、近寄りがたい存在と思っていたようです。その日もほとんどお話にならず、黙々と作業されました。それが、駅までお見送りした時のこと。描かれたものを一枚ずつくださって、そのうえ、駅の売店ビスコを買って、「ごくろうさん」と言って、私たちの作業着の胸ポケットに一つずつ入れてくださって、にっこりされて、私たちは目が真ん丸になりました。その時の赤いビスコが鮮明に記憶に残り、胸に温かい思い出になりました。
後年、病にお倒れになって、右手を不自由にされた先生は、病床でなお左手で絵を描かれていたとお聞きしました。絵のモチーフになればと季節のお花を送らせていただいていたところ、奥さまが刊行された素描集を送ってくださいました。木々が黄色く色付くと取り出し、先生の事を思い出します。