台風の日。空は刻々とその顔を変えて行き、風がザワザワと騒ぎだす。まるで生きている大きなモンスター登場だ。そんな日にはいつも思い出す。ザワザワがリアルに思い出させる、見知らぬ町で迷子になったあの日のこと。
いくつくらいだったのかなぁ。小学校の4年生くらいだったのかな。父の船が神戸の港に停泊することになり、夏休みだった私たち家族も神戸のマンションに一か月の間仮住まいした。
その時ひとりで出掛けた私は、見事に迷子になった。
折しも台風が来ていたその日。家を出た時は晴れていた空が刻々と様変わりしていく。大きな雲が早いスピードで流れ、ポツポツと落ちてきた雨が次第に激しくなってくる。
歩いても歩いても見知らぬ風景が途切れない。
泣きそうになってくるけれど、迷子になっていることを知られてはまずいと思ってた。心の中では童謡「赤い靴」がずっと流れていた。♪赤いくつ~は~いてた女の子異人さんに連れられて行っちゃた~・・・・ここは神戸だ。(今思えばおかしいけれど^-^)
いよいよずぶ濡れ。心細さもMax。用心して親切そうな確かな人に救いを求めようと決心した。けれど、台風の真っ只中。異人さんどころか歩いている人もいない・・・。激しい雨で視界がぼやけている遠くに見えた人影、大きな前掛けをして大きな傘をさしているふっくらとした優しそうな・・・おばさんだ!ダッシュしてそのおばさんの大きなトトロのようなお腹に抱きついて安心して大泣きした^-^ 今考えたらびっくりしただろうなぁ。思った通りの優しいおばさんは、働いているたまごの配送倉庫のようなところに連れて行ってくれた。お兄さんが大きなトラックの助手席に乗せてくれて、自分の住んでいるマンションの名前はなんとか言えた私を前まで送ってくれた。
お父さんとお母さんには叱られて、お礼を言わなくてはと探してみたけれど、どうしてもみつからなかった。
いつかもう一度歩いてみたいと思う。もしまだあったらお礼を言いたいなぁって思っています。