22年前年上の友人からいただいた童話屋の詩集「おんなのことば」
で、茨木のり子さんの詩と出会いました。
その頃の私は、夫さんと幼い子供たちとの蜜月に別れを告げて、
住み慣れた故郷を離れ、見知らぬ土地で大家族の生活が始まったばかりで、
まるで突然の嵐に放りだされたような混乱と戸惑いの中にありました。
「自分の感受性くらい」を何度も何度も繰り返し繰り返し読みました。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
48歳の時の代表作の一つです。
茨木さんの家。西東京市東伏見の閑静な住宅街に建つ、山小屋風のモダンな邸宅。
1958年から夫と2人で暮らしたこの家で、2006年に79歳で亡くなるまで
50年近くの歳月を過ごし、詩を創作していました。
写真の椅子は「寄りかからず」のモデルになった椅子と言われています。
その後の私ですが、嵐の中では抗ってはダメと気づきましたし、嵐は去るものです。
本来マイペースなので、今は穏やかな波間をぷかぷかやっています。
晩年に出来た「寄りかからず」茨木のり子に、また背筋がピンと伸びた思いです。